ブラックアトリエから不当に解雇されたけど、宮廷錬成師になっていた幼馴染と再会して拾われました〜実は隠されていたレアスキルで最高品質の素材を集めていたのは私だったようです〜
鞘から引き抜くと、青白い輝きを放つ美しい刀身が姿を見せる。
その長剣を逆手持ちにすると、力強く山道の地面に突き立てた。
瞬間、突き立った刃先から“氷”が迸り、岩人たちの足元を一瞬にして凍りつかせてしまう。
氷を発生させて相手を凍結させる長剣。間違いなく錬成術によって生み出された錬成武器だ。
クリムは五体の岩人の動きを止めた後、岩人の一体に狙いを定めて剣を振りかぶる。
まずは胸元を斬りつけて全身を凍結させて、次に唯一脆いとされている首と胴体の接合部に剣を振り抜いた。
岩人の首が宙を舞い、同時に本体が氷の中で消滅する。
噂のような爆発は起こさず、何事もなく討伐することができた。
今みたいに凍結させたり水で濡らすことができれば、岩人は爆発しないとのこと。
だから雨の日とかは討伐と採取が楽だけど、こうして武器や魔法を使っても爆発を抑えることができるそうだ。
「次は私が……」
そう言うと、クリムは頷いて後ろに下がってくれた。
直後、他の四体の岩人が足元の氷を壊して再び動き出す。
私一人で倒せるようにならなきゃ、武器錬成なんて任せてもらえない。
素材採取も一人でできるようにならなければいけないので、私はそれを証明するために気合いを入れる。
「無理して一度に全員を相手することはないから。一体ずつ誘い出して確実に……」
と、助言をしてくれるが、私の体はそれを聞くより先に動いていた。
「【渦巻く水流――不快な穢れを――洗い流せ】――【水流】」
構えた右手の平に、青色の魔法陣が展開される。
直後、そこから大量の水が吹き出し、岩人たちの体に浴びせられた。
四体の岩人は大雨にさらされたかのように全身を濡らす。
それに対して怒り狂ったように勢いを増して迫って来るけど、これで爆発はしない。
そうとわかるや、私は続け様に魔法を放った。
「【濁りなき純水――汚れを知る者たちを――刃となって断罪せよ】――【水刃】」
瞬間、私の足元に魔法陣が展開されて、そこから四本の水の剣が飛び出した。
私の前後左右から現れた水の剣は、ひとりでに宙を舞って眼前の岩人たちの方へと飛翔する。
奴らはそれを叩き落とすように岩の腕を振り上げるが、神速の一振りにより腕が斬り落とされた。
これは、私の意思で操ることができる水の剣。
それを四本顕現させて攻撃を行うことができるこの魔法の名前を、【水刃】と言う。
斬れ味と剣速は使用者の魔力によって左右されるが、どうやら私の魔力でも充分に岩人の体を切断できるようだ。
「任せたよ、剣たち」
四本の水の剣は迅速に岩人たちの体を斬り刻んでいき、ほんの数瞬で戦いは終わった。
バラバラにされた岩人たちは、灰となって風に攫われて行き、消滅する。
後に残されたのは、奴らの体を構成していた岩の一部だけだった。
「これで、いいんだよね?」
「……」
振り返りながらクリムに問いかけると、彼は口をぽかんと開けながら固まっていた。