ブラックアトリエから不当に解雇されたけど、宮廷錬成師になっていた幼馴染と再会して拾われました〜実は隠されていたレアスキルで最高品質の素材を集めていたのは私だったようです〜

「ふざけるなよこの愚図が! 今すぐに素材を取ってこい! 目標数を回収して来なければ、絶対にアトリエには入れんからな!」

「……」

 今から素材採取に行け?
 日付が変わるまで、あと一時間もないのに?
 ただでさえ夜は視界が悪くて、危険な魔物も多いし、素材採取が困難になっている。
 だというのに今から溶液(スライム)の粘液を二十体分回収なんて、帰って来られるのは完全に朝方になるじゃないか。
 でも、行くしかない。
 アトリエに入れないと言ったら確実に入れない人だから。
 開き直って採取を諦めて、外で寝床を確保した場合は、最悪解雇処分を受けるかもしれないし。
 せめて明日の錬成作業開始までに間に合わせれば、きっと許してもらえるはず。
 私の睡眠時間は完全に無くなるけど、やっぱりそれしか……

「あ、明日の朝までには、必ず持ち帰って来ます。ですからどうか、それでお許しくださ……」

 刹那――
 突然視界が揺らいで、全身からすっと力が抜けていった。
 そのまま支えを失った人形のように地面に倒れて、周りから職人たちの驚く声が聞こえてくる。

「お、おい! 大丈夫かショコラ!?」

「誰か手ぇ貸してくれ! 寝床まで運ぶぞ!」

 私、倒れたの……?
 体が思うように動かない。
 起き上がろうとしても手足に力が入らない。
 遅れて私は思い出す。
 そういえば、最後にまともに寝たの…………五ヶ月も前だ。
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