ブラックアトリエから不当に解雇されたけど、宮廷錬成師になっていた幼馴染と再会して拾われました〜実は隠されていたレアスキルで最高品質の素材を集めていたのは私だったようです〜

 剣がイメージ通りの形にならず、ブサイクな木の枝みたいになってしまう。
 これは鉱石の変形と素材が組み合わさるイメージが上手くできていないということ。
 岩人(ゴレム)の鉱石と光砂鉄(こうさてつ)が綺麗に混ざり、刀身として形が変化していくイメージが定まっていないのだ。
 クリムが作ったお手本の方は透き通るような銀色の刃で、形も綺麗なのに。
 それでも私は諦めずに、失敗作に繰り返し錬成魔法をかけていく。

「魔力が枯渇するまで、何回でもやり直しができるから。失敗してもまた錬成し直して、それで感覚を掴んでいって」

「わ、わかった」

 錬成の修行は素材一式だけでも可能となっている。
 錬成に失敗して想定外のものが出来上がっても、失敗作をまた錬成し直せばそれでいいから。
 それで繰り返し錬成を行っていく中で、錬成の感覚とか素材の理解度を高めていくということである。

「一度錬成したものって、別の素材と掛け合わせて錬成するのは相当難しいって言われてるんだよね?」

「『錬成物を錬成の素材にするのは難しい』っていう錬成師の間の常識だね。それがどうかした?」

「でも錬成したものをそのまま錬成し直すのは簡単にできるんだなぁって思ってさ。この失敗作も一応は錬成物でしょ?」

「だからそれを錬成術で錬成し直すのは難しいんじゃないかって?」

 クリムは咳払いを一つ挟むと、私の疑問に対して的確な回答をくれた。

「そもそも錬成物を錬成の素材にするのが難しいのは、錬成物の構造が人間の頭では理解ができないからって言われてるんだ」

「錬成物の構造?」

「錬成術は素材をよく理解していないと成功しないって言うだろ? だから構造が複雑な錬成物を錬成素材にするのはすごく難しいんだよ。僕たちの頭じゃ、複雑な錬成物と他の素材が交わるイメージが持てないから」

 確かに、錬成で出来上がったものと他の素材が交わるイメージはまったくつかないな。
 だから錬成物を他の素材と掛け合わせて、新しい錬成物を生み出すのは難しいのか。
 凄腕の錬成師でも、錬成物と別の素材を掛け合わせるのは一回か二回くらいしかできないって言うし。

「でも、錬成したものをそのまま錬成し直すのは簡単にできる。別の素材を混ぜ合わせるわけじゃなくて、単に形を変えるだけだから難しくはないって言われてるんだ」

「だから錬成を繰り返して、錬成の感覚と素材の理解度を高めていくのが『錬成修行』……か」

 私は作業机に置かれた失敗作に目を落とす。
 素材一式で修行ができるのはすごくありがたいことだ。
 これで望み通りのものが完璧に作れるようになるまで錬成を繰り返していく。
 あとは手本を見たり触ったりして形を覚えることも大切らしいので、クリムが作った剣もよく観察しておこう。
 今は歪な木の枝みたいな剣だけど、修行していけばまともな見た目に変わっていくはずだから。
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