ブラックアトリエから不当に解雇されたけど、宮廷錬成師になっていた幼馴染と再会して拾われました〜実は隠されていたレアスキルで最高品質の素材を集めていたのは私だったようです〜
「僕も最初はそんな感じだったけど、割とすぐに使い物になる武器は錬成できたからそこまで時間は掛からないと思うよ」
「……それはクリムが天才ってだけじゃないの?」
感覚の掴み方とか速さはさすがに個人差があるので、クリムが天才ってだけな気がする。
「僕の才能はどうか知らないけど、どんな錬成師も少なくとも二週間以内には感覚が定まるって言われてるよ。実際、その辺りが原因で錬成師は『鍛治師泣かせ』とも言われてるくらいだからね」
「あぁ……」
それは私も聞いたことがある。
錬成師の手がけた武器や防具がかなりの上等品で、しかも短時間で出来上がるため鍛治師泣かせの職業だと。
加えて鍛治師を育てるよりも短い期間で武器の錬成ができるようになるので、本当に鍛治師にとって錬成師の台頭は痛手になっているようだ。
「でも鍛治師の品がすべてにおいて劣ってるってわけでもないよ。鍛治師には鍛治師にしか出せない職人の色とかあるし、鍛治師作品にこだわる人もいるくらいだから」
「そういう人たちも振り向かせられるような、すごい武器を錬成できるようになれたら一番だね」
いつか自分のアトリエを持った時に、たくさんの人たちに自分の作品を買ってもらいたいから。
というわけで、私は一層気合いを入れて武器錬成の修行を再開させた。
武器錬成の修行を始めて一週間。
クリムの言った通り、その短い期間だけですっかり感覚を掴むことができた。
錬成術は誠に恐ろしい技術である。
そんなこんなあって私はすでに、騎士団用の剣を大量に錬成していた。
近衛師団と討伐師団の数人にも試し斬りをしてもらって、かなりの好評をもらっている。
「傷薬に続いて武器まで面白い性質が付いてて、みんなすごくショコラちゃんの武器を気に入ってるよ」
近衛師団の師団長ムースさんからもそんな報告を受けた。
そう、私が手がけた剣には傷薬同様、特殊な性質が付与されている。
そこを評価されて、今は大量に錬成依頼をもらっているのだ。
◇黒石の直剣
詳細:岩人の鉱石を素材にした直剣
深みのある漆黒の刀身が特徴的
軽量でありながら耐久性に優れている
状態:良
性質:鋭利性強化(S)耐久性強化(S)自動研磨(S)
『鋭利性強化』は刃が付いている武器の鋭さを増してくれる。
そのSランクの性質が付与されているため、どのような魔物も簡単に切り裂くことができるようになっているのだ。
ちなみに取り扱いには注意である。
『耐久性強化』は文字通り武器の耐久性を底上げしてくれる性質。
これのおかげで簡単に壊れることがなく、錆び付きにくいということもあって騎士たちからはかなり好評だ。
『自動研磨』については手入れの手間が完全に無くなるということで重宝されている。
いくら鋭利性強化の性質が付与されていると言っても、使い込んでいけばいずれ刃こぼれしていく。
しかしこの性質があるおかげで刃は自動的に磨かれて、常に最高の切れ味を保つことができるようになっているのだ。
極限まで鋭さを増した、簡単に壊れることのない、手入れいらずな規格外の直剣。
それが私の錬成した武器――ショコラの『黒石の直剣』である。