ブラックアトリエから不当に解雇されたけど、宮廷錬成師になっていた幼馴染と再会して拾われました〜実は隠されていたレアスキルで最高品質の素材を集めていたのは私だったようです〜
第七話 「望まぬ再会」
冒険者からは色々な武器の錬成を依頼されていた。
近衛騎士や守衛騎士たちが装備しているような剣の他に、槍や斧など。
また、かなり特殊な形状の武器を所望する依頼も中にはあった。
鎖が付いている鎌とか、大きなフォークみたいな三叉槍とか、爪で引っ掻くように攻撃できる鉤爪とか……
当然私はそれらの錬成の経験がないため、クリムに感覚を教えてもらいながら武器錬成をすることになった。
「冒険者って変な武器使う人多いの?」
「使う武器に規則はないからね。だから古今東西、あらゆる国の武器をみんな使ってる。もちろん錬成師はそれらの武器を作るように依頼を受けるわけだから、今からでも知見を広げておいた方がいいよ」
クリムは商人のお父さんと色んなところを旅していたから、かなり知識は豊富な方だ。
だから色々な武器や道具について知っていて、錬成術の腕もあるから簡単に手本を作ってみせた。
そういうことをさらりとやられると、否応なく実力の差を感じさせられてしまう。
さすがは天下の宮廷錬成師様だ。
そんな風にクリムの助けもあるおかげで、私は順調に錬成依頼をこなしていった。
それから一週間ちょっとが経過。
冒険者からの依頼を引き受けているうちに、次第に町で自分の作った武器を見かける機会も増えてきた。
私が錬成した武器を、町の冒険者たちが背負って歩いている。
その様子を見て、私は密かに歓喜の笑みを浮かべていた。
まだ自分のアトリエを開いたわけじゃないのに、自分の作ったものが誰かの手元に届いている。
王国騎士の人たちにも傷薬とか剣を使ってもらっているけれど、あれはあくまで宮廷錬成師シュウの手伝いとして作ったものだから。
個人的に引き受けた依頼で武器を作って、それを使ってもらうというのはこんなにも嬉しいことだったんだ。
ちなみに町中では、冒険者同士のこんな会話を聞いたりもした。
「あれ、お前武器新調したのか?」
「そうそう。錬成師に依頼して昨日受け取りに言ったんだよ。ほら、見習い錬成師のショコラって知ってるだろ?」
「あぁ、あの宮廷錬成師のとこにいるっていう……」
ギルド近くにいた冒険者二人が、私のことについて話をしていた。
「噂通りやべえ性質ばっか付いててさ。試しに今朝、ブールの森に魔物討伐しに行ったんだけど、今まで手こずってた樹人を一撃で倒せたんだよ! お前も武器新調しようか悩んでるって言ってたし、錬成師ショコラに頼んでみたらどうだ?」
「へぇ、かなり良さそうだな」
そんな風に見習い錬成師ショコラの名前が密かに広まり始めている。
正直嬉しい気持ちよりも恥ずかしい気持ちの方が大きいから、あまり話を大きくしないでほしいけど。
ちなみに依頼品の受け渡しは守衛さんに任せているから、私は顔を知られていない。
だから変に注目されることはなく、そこだけは幸いだった。