ブラックアトリエから不当に解雇されたけど、宮廷錬成師になっていた幼馴染と再会して拾われました〜実は隠されていたレアスキルで最高品質の素材を集めていたのは私だったようです〜
確固たる意思を主張するようにババロアを鋭く睨みつける。
その険悪な雰囲気を感じ取ってか、横切る人たちが僅かに視線を向けてきていた。
そんな中、その視線を気にする余裕もないくらい、ババロアはひどく怒りに打ち震える。
「ふ、ふざけるなよショコラ……! 三年間面倒を見てやったのを忘れたのか!」
「面倒を、見た……?」
これまた耳を疑う言葉を掛けられる。
それがきっかけとなって、いよいよ恐怖の気持ちが怒りの感情へと変化していった。
「“面倒を見た”って、あれで面倒を見ていたつもりだったの?」
「……なんだと?」
「三年間、ろくに錬成術のことも教えないで、素材採取ばかりやらせてたくせに。寝ぼけたこと言わないで!」
私は胸に秘めていた怒りを、爆発させるようにババロアにぶつける。
「休みもほとんどない。修行の時間だって設けてもらえない。挙句の果てに使い潰されてアトリエを追い出された。それでよく“面倒を見てた”なんて恩着せがましいことを言えたわね!」
横を通り過ぎて行く通行人たちの視線も気にせず続ける。
「理不尽に徒弟を破門されたせいで、ギルドに悪評が広まって他のアトリエにも相手にされなくなった。一時は本当に夢を諦めかけるところまで追い詰められて、私は三年間を無駄にされかけたのよ……! それなのに今さら、あんたのところに戻るわけないでしょ!」
「……」
「それに私はもう、別のアトリエで手伝いをさせてもらってるの。だからもう二度と私に話しかけて来ないで」
言いたいことだけをぶつけて、私はすぐさま背を向ける。
そのまま立ち去ろうとすると、ババロアの焦る様子が背中越しに伝わって来た。
「ま、待てショコラ! まだ話は終わってない! 今ならまだ聞かなかったことにしてやるから、もう一度よく考えて……」
「ついて来ないで!」
私は振り返ることもなく、素材採取に向けて町を出て行った。