ブラックアトリエから不当に解雇されたけど、宮廷錬成師になっていた幼馴染と再会して拾われました〜実は隠されていたレアスキルで最高品質の素材を集めていたのは私だったようです〜
第八話 「私の居場所」
「クソッ!」
ショコラとの再会の後。
自身のアトリエに戻って来たババロアは、部屋に入るなり卓上に置いていた道具を床にぶち撒けた。
今ではそれらを片付けてくれる職人や徒弟たちもいなくなり、客も来ないせいでアトリエは閑散としている。
「見習い錬成師の分際で楯突きおって……!」
今まであのような態度を示してきたことは一度もなかった。
あの言いなりだったショコラが、よもや反抗してくるなんて。
まるで飼い犬に手を噛まれたような気分になり、ババロアの怒りはさらに燃え上がっていく。
このままではまずい。
失ってしまった客たちを取り戻すことができない。
何としてもショコラに素材を集めさせなければ。
アトリエの不調により、八つ当たりをするように職人たちを追い出してしまった。
そのせいでババロアのアトリエの信頼は地の底まで落ちている。
彼らもすでに別のアトリエに拾われたらしいと聞いたので、今さら戻って来てくれる者たちはいるはずもない。
今ではババロアが自分自身で素材を集めて、錬成作業を行っている。
錬成物の質が落ちたのもそうだが、作業効率まで悪くなったせいで余計に盛り返すのが難しくなってしまったのだ。
「ショコラさえ、ショコラさえいれば……!」
作業効率も良くなり、また前のような錬成物も生み出すことができるようになる。
ババロアのアトリエの復興に、ショコラ・ノワールは絶対に欠かせない人物なのだ。
だからなんとかしてショコラを連れ戻す方法を考えるが、上手い方法は簡単には見つからない。
あの様子からしてこちらの言葉には耳を傾けないだろうし、恫喝も効果がなかった。
ならいっそ、ショコラが採取した素材を強引に奪うか?
いや、一度は成功するだろうが、その後は警戒されて強奪ができなくなる。
結局はその場しのぎにしかならない方法だ。
やはりショコラはまた素材採取係としてアトリエに縛りつけたい。
「何としてもショコラを、俺のアトリエに……」
ババロアは散らかった部屋の中心で、金髪を掻きむしって考え込む。
しかしいい案が思い浮かばずに、ババロアは怒りに狂って目についたものを床にぶち撒けた。
「こうなったら力尽くでも……」
そんなことを考え始めたババロアの視界に、ふと一つの錬成物が映り込む。
前に依頼を受けて作ったけれど、危険な性質が付いてしまっために売り物にならなかった品だ。
ババロアが暴れた衝撃で棚から落ちたようで、それを見た彼はハッとなって思いつく。
「これを、使えば」
追い込まれた男が考えついた、悪魔的な方法。
この錬成物を使えば、ショコラをまたこのアトリエに縛りつけることができる。
元はこの錬成物もショコラが採取して来た素材で作ったものだ。
ショコラは自分自身の力のせいで苦しめられることになるのだと思い、ババロアは久しく愉快な笑みを浮かべた。