ブラックアトリエから不当に解雇されたけど、宮廷錬成師になっていた幼馴染と再会して拾われました〜実は隠されていたレアスキルで最高品質の素材を集めていたのは私だったようです〜
「……どういうつもりよ、ババロア」
「聞き分けが悪いお前に、少し灸を据えようと思ってな」
ババロアは金髪を掻き上げながら、呆れたように肩をすくめた。
「素直に言うことを聞いていれば、このような強引な手に出ることもなかったんだがな。今ならまだ、地べたに頭を擦りつけて謝れば許してやらんこともない」
「昨日も言ったでしょ。私はあんたのアトリエになんか絶対に戻らないって」
改めてババロアを拒絶する。
私はなんと言われようともあのアトリエに戻るつもりは一切ない。
ごろつきをチラつかされて脅されても、私は確固たる意思でかぶりを振り続けた。
「なら仕方ないな。自らのその愚かさを痛感するがいい」
ババロアはそう言いながら、不意に懐に手を入れる。
そこから取り出されたのは、銀色のアクセサリーのようなものだった。
よくよく見ると、それは花模様がついた首飾りで、見覚えのあるそれに私はハッと息を呑む。
「それって……」
前にババロアが錬成術で作っていた『銀華の首飾り』だ。
確か、不本意な性質が付いてしまって売り物にならなかったものが一つだけあった気がする。
その性質の名前は……『呪縛』。
◇銀華の首飾り
詳細:銀切華を素材にした首飾り
美しい銀色の輝きが特徴となっている
身に付けている者に良縁を呼び込むとされている
状態:最良
性質:呪縛(S)
呪縛の性質を付与された装備は、装備者の意思で着脱ができないようになっている。
それを手がけた錬成師の意思でのみ取り外すことが可能で、普通の装飾品として扱うことができない。
さらには錬成師の意思に応じて、装備者に呪いを付与することもできるそうだ。
だから一般的にこの性質は、捕らえた魔物や動物を大人しくさせるために使われることが多い。
それが依頼品の首飾りに宿ってしまったばかりに、売り物にすることができなかったのだ。
ババロアの意思で苦しみを与えることができる、着脱不可能の呪いの首飾り。
「……それで私を脅すつもり?」
「脅す? 何を勘違いしている。これは躾のなっていない飼い犬を大人しくさせるための“首輪”だ」
ババロアはその首飾りを指にかけて、指先でくるくると弄ぶ。
そして不気味な笑みを浮かべると、鋭い目つきでこちらを射抜いてきた。
「これをつけて、一生俺の元で飼い慣らしてやる! お前は俺のために素材を集めるだけの忠実な犬なんだよ!」
瞬間、ババロアの声に呼応するように、バンダナとマスクを着けた男たちが迫って来る。