ブラックアトリエから不当に解雇されたけど、宮廷錬成師になっていた幼馴染と再会して拾われました〜実は隠されていたレアスキルで最高品質の素材を集めていたのは私だったようです〜
その光景を目の当たりにした私は、静かに拳を握りしめて呟いた。
「……そう」
こいつらはおそらく、ババロアに雇われたならず者たちだろう。
自分一人では私を捕らえられないと思ったから、確実に捕縛するために応援を用意したのだと思う。
いや、そもそもこのようなことに手を貸している時点で咎人であることに違いはない。
だったらもう、遠慮は無用だ。
私は握っていた右拳を開いて前に向けると、全力で迎え撃つことを決意した。
「【鋭利な旋風――反逆の魂を――すべて切り裂け】――【風刃】!」
刹那、右手を中心に緑色の魔法陣が展開される。
中央から新緑の光と風の刃が吹き荒れると、ならず者たちに向けて高速で飛来した。
「うっ……!」
奴らは服や髪を掠めながら、紙一重で風の刃を回避する。
一部、連中の持っていた剣や槍などを切断し、その威力に奴らは笑みを捨て去った。
「な、なんつー威力の魔法だよ……!」
「気を付けろお前ら! こいつただの女じゃねえ!」
ババロアも驚いたように目を丸くする中、私は続け様に式句を唱える。
「【地を揺らす落雷――見上げる愚者どもを――まとめて消し飛ばせ】――【雷槍】!」
今度は右手に黄金色の魔法陣が展開される。
そこから超速度の稲妻が迸り、前方に立っていたならず者たちを瞬く間に貫いた。
「ぐああああっ!!!」
バチバチッと全身を痺れさせながら、男たちが地面に倒れていく。
装備を見る限り、錬成術で作られた錬成防具だと思う。
だからある程度は魔法の威力を軽減できると思って全力で放ってみたが、その予想は当たっていたようで程よく鎮圧することができた。
「な、なんなんだ、この強さは……!? なぜショコラに、これほどの力が……」
ババロアは理解が追いついていないように頭を抱えている。
私はその様子を見て思わず呆れてしまい、嘲笑まじりにババロアに返した。
「『なぜ』って、あれだけ魔物討伐させられてたら当然でしょ。私がこの三年間、どれだけの数の魔物と戦ってきたと思ってるのよ」
それを知らないババロアではあるまい。
私に過剰な魔物討伐を強制させていたのは他でもない、このババロア本人なのだから。
今さらごろつき連中に遅れを取るはずもなく、私は鋭い視線でババロアたちを睨みつけた。
「全員容赦しないわよ。このことを教会で裁いてもらって、全員牢獄に叩き込んでやるから」
「くっ――!」
改めて右手を構えると、奴らは怯えるようにして顔をしかめた。
私は全員を無力化するべく、魔法の式句を唱えようとする。
しかし、その時……
ガサッ! と遠くの方から音が聞こえてきた。