ブラックアトリエから不当に解雇されたけど、宮廷錬成師になっていた幼馴染と再会して拾われました〜実は隠されていたレアスキルで最高品質の素材を集めていたのは私だったようです〜
次いでババロアは不快そうに顔をしかめた。
「第一、お前のような出来損ないの徒弟を持っているというだけで、師範の俺の品位が周囲から疑われることになる。大事なこの時期に不評に繋がる種を残しておくことはできん」
「で、でしたら私は、錬成術の方には一切関与いたしません。ババロア様の不評になるような行いは絶対にしませんので、まだこのアトリエに……」
「くどいぞ!」
ダンッ! とババロアの手が卓上に叩きつけられる。
「いったいあと何秒、無能のお前に時間を割けばいい? ただでさえ滞っている作業が山ほどあるのだ。さっさと失せろこの才能なしが」
「……」
まるで取りつく島がなく、これ以上の抵抗は無意味だと私は悟った。
これで、私の錬成師人生は終わり。
徒弟期間中に解雇されて、それからどのアトリエにも雇ってもらえず夢を諦めた者たちはごまんといる。
私もその人たちと同じように、錬成師の夢を諦めるしかないの?
私は呆然としながら振り返り、覚束ない足取りで部屋の扉へと歩いて行く。
そしてババロアに言われた通り立ち去ろうとすると、最後に彼は……
「そもそも……」
耳を疑う言葉を掛けてきた。
「女が錬成師になろうということ自体、錬成師に対する侮辱に他ならない」
「…………はっ?」
「結局は女に錬成師が務まるはずもなかったのだ。事実、軟弱なお前は素材採取の役目もまともに果たせず倒れたではないか。たとえ錬成師になれていたとしても先は長くなかったはず。女ごときに大した物など、作れるはずもないのだからな」
「――っ!」
私は鋭く目を細めて、ババロアの方を振り返った。
その感情に任せて掴みかかろうかと思ったけれど、寸前で自制が働く。
そして何も言い返すことができずに、悔しさを噛み殺しながらババロアの部屋を出て行った。
こうして私は、なんとも理不尽な理由で、劣悪なアトリエから解雇されたのだった。