ブラックアトリエから不当に解雇されたけど、宮廷錬成師になっていた幼馴染と再会して拾われました〜実は隠されていたレアスキルで最高品質の素材を集めていたのは私だったようです〜
クリムはこの日から、れっきとした錬成師になった。
森や山に一人で素材を採取しに行く。
採って来た素材を錬成して商品を生み出す。
それを行商人の父に協力してもらって各所に売ってもらう。
そうして少しずつ錬成師としてチョコの治療費を稼いでいった。
とにかくがむしゃらだった。
ここまでよくしてくれたチョコをなんとしても助けたかった。
まだまだたくさん一緒の時間を過ごして、もっと錬成術のことを教えてもらいたかった。
ショコラと仲直りするところを、元気な姿で見届けてほしかった。
いつか自分に語った『アトリエを開く』という夢を、絶対に叶えてほしかった。
――それから一年半後。
チョコはこの世を去った。
その知らせに、クリムは頭の中が真っ白になった。
チョコがいなくなった現実を受け入れることができなかった。
もうあの人に錬成術を教えてもらうことができない。
あの人に揶揄ってもらうこともできない。
あの人の優しさに触れることもできない。
尊敬するチョコに会うことができないと知った時、同時にクリムは自分の無力さを思い知った。
『僕がもっと、すごい錬成師だったら……』
チョコの治療費だって集められたかもしれないのに。
いや、それこそチョコの病気を治せる道具だって作れたかもしれないのだ。
その悔しさと悲しさから、クリムは自室に閉じこもった。
何をするでもなく、ただひたすらに泣き続けた。
たった二年間の師弟関係ではあったが、クリムにとってチョコと過ごした時間はあまりにも濃密なものだった。
それから数日が経った頃。
ふと窓の外を見ると、ショコラがいることに気が付いた。
彼女は青い花を手に、村の教会の方へと向かっていた。
村の教会にチョコの墓ができたと聞いたので、おそらく墓参りをしに行くのだろうとクリムは思った。
クリムはいまだにチョコの死を受け入れることができていないため、墓参りには行けていなかった。
だから母の死にきちんと向き合っているショコラを、文字通り陰ながらすごいと思っていた。
しかし、すぐに異変に気が付くことになる。
ショコラは翌日も墓参りをしていた。
また翌日も墓参りをしていた。