ブラックアトリエから不当に解雇されたけど、宮廷錬成師になっていた幼馴染と再会して拾われました〜実は隠されていたレアスキルで最高品質の素材を集めていたのは私だったようです〜
毎日決まって夕方頃になると、青い花を持って教会へと向かっていた。
明らかに様子がおかしかった。
まるで魂が抜けてしまったかのように、常にぼんやりとしていた。
まともに食事を取れていないのか、日に日にやつれているように見えた。
父のカカオが止めに入る姿も何度か見た。
それでもショコラは墓参りをやめようとはしなかった。
その理由を、クリムは遅れて知ることになる。
ショコラが供えに行っていた青い花を調べると、それは『夜光花』と呼ばれるものだった。
集めると死者の魂を呼び寄せると言われていて、逸話では死者を蘇らせたとも語られている。
ショコラは母のチョコに帰って来てほしいからと、毎日夜光花を供え続けていたのだ。
『…………やめろよ』
クリムは墓参りを続けるショコラを見たくなかった。
諦めないショコラを見ていると、本当にチョコが帰って来るのではないかと思わされた。
そんなはずないとわかっているのに、ほんの僅かな期待が心中に生まれてしまうのだ。
何よりも、日を追うごとにやつれていくショコラの姿が、病気で少しずつ弱っていくチョコの姿と重なって見えてしまった。
だからクリムは、我知らずショコラのことを止めに行っていた。
墓参りに向かおうとする彼女をせき止めて、およそ二年振りにまともに言葉を交わした。
『そんなことしたって無駄だよ』
『無駄……?』
『ショコラの母親はもう死んだんだ。そんなことしたって死んだ人間は戻って来ることはないんだよ』
まるで自分に言い聞かせるようにクリムは言った。
自分が未熟なせいでチョコを死なせた憤りもあって、思わず言葉が強くなってしまった。
これ以上、墓参りをするショコラを見たくない。
チョコが帰って来るかもしれないという期待を抱きたくない。
そんな気持ちから、つい心ない言葉を掛けてしまうと、ショコラは掠れた声でこう返してきた。
『あんたには関係ないでしょ。関係ない奴が、勝手に割り込んで来ないでよ』
関係ない奴。
ショコラにはチョコとの関係を話していなかったので、そう言われるのも仕方がない。
それに繊細な今、心ない言葉を掛けてしまったのはクリムの方なので、非は完全にこちらにあると思った。
けれど、自分にもチョコとの思い出がある中で、“関係ない奴”と言われるのはすごく悔しかった。
加えていまだに墓参りを諦めようとしないショコラを見て、クリムはいよいよ彼女の手元から夜光花を取り上げた。