ブラックアトリエから不当に解雇されたけど、宮廷錬成師になっていた幼馴染と再会して拾われました〜実は隠されていたレアスキルで最高品質の素材を集めていたのは私だったようです〜

「まあ正直俺たち王国騎士からすれば、ショコラちゃんにはまだ働いてほしいと思ってたから、こうしてクリム君のアトリエに残ってくれることになって安心してるよ。ショコラちゃんの作ってくれるもの、毎回面白くて笑わせてもらってるし」

「笑いを取るために手伝いをしてるわけじゃないんですけど……」

 確かに私が錬成したものは、クリムのものと比べてかなり異質だからね。
 採取した素材に規格外の性質を宿す力を持っていて、私はそれを使って特異な錬成物を生み出している。
 それを面白がって依頼を出してくれる冒険者が多く、同じように騎士団の人たちにも気に入られているみたいだ。

「またこんなに依頼もらって……」

 クリムが私宛ての錬成依頼を見て、呆れた顔で忠告してきた。

「引き受けるのは勝手だけどさ、何でもかんでも受け入れてたら本来の仕事に手が回らなくなるかもしれないよ。倒れられたらこっちが困るんだから」

「ご、ごめんごめん」

 私も見境なく依頼を引き受け過ぎているのではと最近思うようになってきた。
 クリムの言う通り、さすがにそろそろ自重しよう。
 と、そんなやり取りを傍らで見守っていたムースさんが、唐突に訝しい目を向けてきた。

「あれあれぇ? なんか二人ともいい感じになってない? 前よりも仲が良くなってるような……」

「えっ? そ、そうですか……?」

「……ムースさんの勘違いじゃないですか」

 私とクリムは目配せをして、無言の意思疎通をする。
 下手なことは言わないようにと。
 するとムースさんはそれ以上の言及はしてこずに、意味ありげな視線だけを私たちの方に向けてきた。

「なるほどなるほど、よーくわかったよ。とりあえず二人がこうして、仲良くアトリエをやってくれればそれでいいから。それ以上のことは望まないよ」

 いったいどういう意味の台詞だろう?
 そう不思議に思ったが、ムースさんは最後に『邪魔者は退散するね』と言い残してアトリエを去って行った。
 サボりに来たんじゃなかったのかな?
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