ブラックアトリエから不当に解雇されたけど、宮廷錬成師になっていた幼馴染と再会して拾われました〜実は隠されていたレアスキルで最高品質の素材を集めていたのは私だったようです〜

 再びクリムと二人きりになり、お互いに抱えている仕事に集中することにする。
 しばらく黙々と錬成作業をすると、お昼休憩の時間になり、クリムが食堂からサンドイッチを持って来てくれた。
 一旦錬成作業を止めてご飯を食べ始めると、そのタイミングでクリムが問いかけてくる。

「でも、本当によかったの?」

「んっ、何が?」

「品評会への参加を見送って。次回の開催は一年後らしいし、ショコラとしては早く自分のアトリエを開きたかったんじゃないの?」

「あぁ……」

 先ほどのムースさんとの会話を聞いていて、クリムは改めて疑問に思ったようだった。

「まあ、それが私の夢で、お母さんの夢でもあるからね。そもそもクリムのアトリエに手伝いに来たのも、品評会への参加資格を得るためだったし。でも……」

 私は品評会への出展を断った理由を、今一度クリムに話した。

「クリムのアトリエの手伝いをまだしたいと思ったからさ。今手伝いを辞めるのは、なんか途中で投げ出したみたいな感じがして嫌だったし」

「別にそんなことはないと思うけど」

 クリムがそう思っても、私はそんな感じがしたのだ。
 それに私が抜けた分、クリムが苦労を強いられることになるのは目に見えていたし。
 お互いにお母さんのためにアトリエを盛り上げようとしているのだから、この際協力して目標に突き進んだ方がいいと思っただけだ。
 そしてもう一つ。

「それに私は、もう一つ新しい目的を見つけたから」

「へぇ、そうなんだ。それってどんな?」

「秘密」

 なんだよそれ、とクリムはサンドイッチを齧りながらささやかな笑みを浮かべた。
 もう一つの理由は、気恥ずかしいのであまり言いたくない。
 お母さんがすごい錬成師だったってことをみんなに伝えたいのもそうだけど、私自身が錬成師として成長したい気持ちもあるのだ。

 そのためにはクリムのアトリエにいるのが一番だと思った。
 この天才を、一番近くで見続けることができるから。
 クリムという圧倒的な才能から、錬成師としての糧を吸収できると思ったから。
 まだまだ私は、彼から学ばなければならないことが多い。
 最終的にはクリムに並ぶくらいの、凄腕の錬成師になりたいと思った。
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