キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ

「な……っ!」


お湯の水面が波となって、勢いよく浴槽にぶつかっている。

それでも私の体が安定しているのは、凌生くんが両腕だけで私をガッシリ支えてくれてるから。


「あ、の……あの、凌生くんっ!」

「んー?」


私の上半身は、完璧に浴槽から出てしまっている。

凌生くんが隙間なく抱きしめてくれてるおかげで、裸を見られる心配はないけど……。


それよりも何よりも。

どうして私は凌生くんに抱きしめられているの?


「凌生くん、あの……っ」

「なぁ未夢の後頭部、なんか傷あるけど生まれつき?」

「え、傷?」

「切った後みたいな」


そこまで言われてピンと来た。


「それは再婚してからすぐ、私の不注意で家具に頭をぶつけた時の傷です」

「再婚してすぐ?」
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