キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ
「……未夢さ、なに勘違いしてんの」
「勘違い?」
「お前は人質、それだけだ。このB地区のことなんか何も知らなくていいんだよ」
「!」
辛辣な言い方に、思わず肩が跳ねる。
壁紙が黒一色なのもあって、その中央に佇む凌生くんの雰囲気はただならぬもの。
黒闇の中でキラリと光る赤いピアスも、凌生くんにの怖さを倍増させている。
そんな怯えた私を知ってか知らずか。
まるでトドメをささんばかりに、凌生くんは更に声を落とした。
「それと地下の奴に優しくしてもらったからって、簡単に絆されるな。相手は自分を襲撃してきた相手だ、気を抜くな」
「絆されるって、私はただ……」
「じゃあお前は、自分を襲って来た奴を簡単に許せんの?
もし自分が怪我をしても? 誰かが命を落としても?
殺しちゃいましたゴメンナサイ罪を償います――これでも〝ハイそうですか〟って許せんの?」
「!」
そうは言ってない。
だけど……きっと凌生くんの言ってることが正しい。
私は世間を知らない。
このB地区のことも知らない。
でもね、これだけは知ってるの。