キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ

「私は、ただ嬉しかったんです……」

「嬉しかった?」


そう。嬉しかった。

今まで「ありがとう」って言われない人生を歩んできたから、その言葉を言ってもらえて嬉しかったの。


「……未夢、ごめんな。ちょっと意地悪しすぎた」

「凌生くん……」


凌生くんはベッドにつけた手を離すかわりに、私の体を支えて起こす。


ほらやっぱり凌生くんは優しい。

って思っていたけど――


「はい、マイナス百点」

「え?」


凌生くんの手によって支えられていた体は、再びベッドに押し戻される。

ドサッ

どうやら凌生くんの手が、私の肩を押したらしかった。


「え……、え?」

「……」


なんで?

凌生くん、どうしてそんなに怒った顔をしているの?


「なぁ未夢。さっき言ったろ?」



――優しくしてもらったからって簡単に絆されるな



「もう忘れちゃってさ。なに気を抜いてんだよ」
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