キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ

確か、放課後お兄さまから電話があって。

満点じゃないから家庭教師をつけると言われて。

それが嫌で、家を飛び出して……


あ、大変だ――


「今、何時……っ?」


ガバッ

勢いよく起き上がり、時計を確認……しようにも、スマホはないし壁時計もない。

くもりガラスから見える空は真っ暗。家を出た時は夕方だったのに。


「長時間、無断で外出したなんて知れたら……」


いや、もう知られている。

家を飛び出す時、使用人さんに見つかったもの。

ということは必然的に、私の行動は家族に伝わっている。


「今度は、何をされるんだろう……っ」


膝を抱き寄せ小さくなった、

その時だった。


「へぇ。〝何〟されんの?」

「え……」


声のした方を向くと、その人はすぐ近くにいた。

黒い髪に、整った顔。

歳は近いように見えるけど、着ているのは黒のスーツ?


「あなた、誰……」

「……」


すると男の人は、私に近寄って来る。

音もなく、着実に。

そして――
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