キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ

グッと両手を握り締める私を見て、雷斗くんが呟いた。


「それにさ、つまんないじゃん」

「え?」


もともとスプーンにすくっていたご飯の、更に倍の量をすくい直す雷斗くん。

ピラミッドみたいな形に乗ったそれを、またもや私の目の前にさしだした。


「泣き顔は見飽きたからさ、そろそろ笑ってくれないと」

「雷斗くん……」


その言葉の端々から雷斗くんの優しさを感じるのは……気のせいなのかな。

ううん、きっと気のせいなんかじゃない。


「雷斗くんは……昔も優しかったですよね」

「昔?」

「私が泣いてた時、よく〝もう泣いちゃダメ、笑って〟と。そう言ってくれました。

その言葉が力強くて、嬉しくて……。雷斗くんからは、何度も何度も笑顔をもらいました」

「……~っはぁ、調子狂うなぁ」


ぽりっと頭をかいた雷斗くんは、更にスプーンの上のご飯を増やした。


「俺をおちょくった罰として、一気に食べてね」

「お、おちょくってなんか、」

「はいはい、じゃあ食べようか。いただきますっと」
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