キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ

「このB地区の奴のことを純粋に信じてるのもそうだし、献身的に春宮の看病をするのもそうだし」

「人質、とはいえ……凌生くんは、私にB地区という居場所をくれました……。きっと私……ここが、好きなんです」


だから信じたいのかもしれません。幹部の皆も、イレイズの人も――


「そして、あわよくば昔のように皆と仲良くなりたいなって……そんなことを、思っちゃって。

へへ……厚かましいですよね」


すみません、忘れてください――


「すー……」

「〝信じたい〟ねぇ」


ついに寝てしまった私を見ながら、雷斗くんは私の言葉を復唱する。


「てっきり〝私のせいだ〟ってべしょべしょ泣くかと思ったら……芯は強いんだから」


そうして、私の顔にかかった髪をサラリとどかす。

くすぐったくて「むにゃ」と寝言した私を、雷斗くんが笑いながら見ていた。



ㅤ𓈊⚜


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