キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ
「わ、わゎ! すみません……っ」
ベッドの上で、私が倒れる前に抱き留めてくれた男の人。
「何してんだ」と苦笑を浮かべながら、二人して床へ座り直した。
「す、すみません。B地区の噂を〝今日〟聞いたもので……」
「今日……ねぇ。総季家のお嬢さんだってのに世間知らずだな。
B地区は総季家を嫌う奴の集まりだってのに、なにホイホイ来てんだか」
「す、すみません……」
顔を上げられなくて、フローリングばかり見ちゃう。だって、この人の言う通りだから。
総季家を恨む人が集まるB地区に、総季家の娘が乗り込んじゃったんだもん。
それって捉え方によっては……。
「一応きくけど、殴り込みに来た?」
「ち、違いますっ」
「ふっ、なら良かった」
ふわっ、と。心から笑ってくれた気がして……。
優しい笑顔に、少しだけ安心する。