キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ
何も事情を知らない秋國に、夏屋が一通り説明する。
イレイズが騒ぎを起こしたのは今回が初めてではないから、幹部全員、さして驚きはしない。
問題は――
「毒を持ち込むようになりましたか」
「しかも秘密裏に、だ。地下に入る前に全身の検査をしている。丸腰だったはずなのに、いつ毒を入手したんだ?」
それに毒だけじゃなく、ナイフも持っていた。
ナイフなんて大きな獲物は、一人で隠し通すことは無理だ。
「B地区にスパイがいる、ってことだよね?」
「仲間とやりとりできる抜け道があるのかもしれません。B地区はこじんまりとしてる割には〝穴〟が多いですから」
「……一つ一つ潰していたらキリないけど」
「……」
三人の言うことはもっともだ。
だけど、俺にはさらに気にかかる事がある。
「未夢がここに来た日から、未夢ばかり狙われている。未夢のご飯にしか毒が入ってなかったのもそうだ」
「イレイズが未夢さんを狙って消そうとしてると?」
「それって、つまり……」
苦笑を浮かべた夏屋に、俺は頷く。