キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ
「人質と称してじゃがいもの皮をむかせたり?」
「う……」
「一緒のベッドで寝たり?」
「げ……」
「人質の肩書きを散々利用してるのは、どこのどいつだよ」
吐き捨てるように言うと、心当たりがある二人は苦笑を浮かべる。
反対に、冬城は涼しい顔をしていた。
「ねぇ、どうせ冬城も何かやっちゃってるんでしょ? 白状しなよ」
「一緒にしないで。俺は何もしてない。皆みたいにあの子に好意を抱いてるわけでもないし」
そう言った冬城の声は迷いがないように見えて……どこか引っかかった。
「冬城はクールでドライだなぁ。体の中に水分あんの? カラカラじゃん」
「……はぁ。あ、春宮これ」
夏屋をため息一つで返した冬城は、俺に小瓶を渡す。
「これが最後の薬だよ。朝ごはんの後に呑んでね」
「……さんきゅ。って、なんで解毒薬とか持ってんの? 謎なんだけど」
「たまたま」
「……」
冬城の口グセに「たまたま」が入っていたことを思い出す。
そして口グセを言った後は、決して本音を話さない事も。