キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ
でも……ここはB地区で危ない所だ。


これから何をされるんだろう、無事に家に帰れるのかな――

と、考えたところで。

ココも家も、対して差がないことに気付く。

だって家にいたって、私はひどい扱いだもん……。


「おい、その顔」

「え、……いたいいたいいたいっ」


ほっぺをみょーんと伸ばされる。

ぴりぴりした痛みに、目じりに涙が浮かんだ。


「辛気臭くさいから、その顔やめろ」

「え……?」

「笑えって。そう言ってんだよ」

「!」


男の人は、言うやいなや。

私の頬にするりと手を滑らせ、自分を見るよう僅かに角度を変えた。

そして視線が交差した瞬間に顔を近づけた。

それはもう、一瞬のことで――


「あ、まっ、」

「待てはナシ」


キスされる、と思った頃には。

唇の先が、既にちりっと擦れ合っていた。
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