キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ

「きゃ……っ」

「ふぅん。こんなんで〝その反応〟?」

「……へ?」


頭の中「さっきのはキス?それとも」って考えることが多すぎて。

男の人が舌なめずりをしたことに気づかなかった。


「お前、かわいいな」

「わ、たしが……?」


そんなこと誰にも言われなかった。家族でさえ――

それなのに、どうして初対面の人が、そんなこと言ってくれるの?


「あなたは……」


男の人の整った顔を見る。

すると、今まで口角を上げていたその人は「でもなぁ」と。

ワントーン低い声で喋った。


「かわいいのに気に食わない。

お前、どうして俺のこと覚えてないんだ?」

「え……」


どういうこと?

私と、この男の人は……会ったことがあるの?


その時、コンコンとドアが叩かれる。

男の人が「入れ」と言うと、お盆にどんぶりを乗せた短髪に褐色肌の男性がドアを開けた。

そして後に続く、三人の男性たち。
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