キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ

言うやいなや。

怜くんは手刀で、凌生くんの首の後ろをトンッと押した。

すると凌生くんは「み、ゆ……」と私に手を伸ばしながら、地面に倒れてしまう。


ドサッ


「え、あの、凌生くんがっ」

「大丈夫、気絶してるだけ。春宮のことはB地区に任せて。あんたは家をなんとかして」

「なんとかって……」

「……任せたよ」


そう言って、凌生くんを担いで車に乗り込む怜くん。

運転手の人が途中から手をかしてくれた事もあり、二人はあっという間に去ってしまった。


「凌生くん、怜くん……」


思い出すのは、さっきの凌生くんの姿。


頬が赤かった。

やっぱりお兄さまに殴られたんだ。

そんなの、許せることじゃない。


「だけど怜くんの言っていた意味って……」



――でも悲しい思いをしているのはこの子だけじゃないって事も、俺は知っているんだ



私と同じ悲しい思いをしている人がいるってこと?

街のみんな?

B地区のこと?

それともココの使用人の人達?
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