キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ
「……さっぱり分からない」
一つだけ分かったのは、オリさんが言っていた「あの方を助けてください」という内容。
あれは、やっぱり凌生くんのことだ。
オリさんは知っていたんだ。
凌生くんが、お兄さまにヒドイ扱いを受けているって。
だから妹である私に助けを求めたんだ。
「今までお兄さまに逆らったことはなかったけど……」
凌生くんのあんな姿を見せられて、それでも黙っている私ではない。
私は、お兄さまを許せない。
この怒りは、きっと勇気に代わる。
今なら――きっとお兄さまに言い返すことが出来る。
ガサッ
「なんだ、帰っていたのか」
「――っ」
振り返ると、お兄さまの姿。
黒い髪、吊り上がった目。
いつも真一文字にかたく閉じられている口。
そして――いつも以上に尖っている冷たい言葉。