キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ
*凌生*
*凌生*side
意識が深い底に沈んでいた時。
上から声が聞こえた。
「あの人も損な役回りだよ」
この声は、冬城?
あの人って誰だ?
いや、そんなことよりも……。
俺は何かを忘れている気がする。
もっと大事で、愛しい……
『凌生くんっ』
ハッ
目を覚ました瞬間、飛び起きる。
すると俺の周りで「うわ!」と声が上がった。
「いきなり起き上がらないでよ、ビックリするなぁ」
「もう大丈夫なのですか?」
「夏屋、秋國……」
二人の背後に、俺の部屋の特徴である黒の壁紙。
ということは、ここは俺の部屋か。
「未夢はどこだ」
「え、どこだって言われても」
「自分の目で見たでしょう? 全て冬城から聞きましたよ」
二人の言葉に、カッと頭に血が上るのがわかった。
「……冬城は」
「ここにいるよ」
ベッドの反対側に、冬城は立っていた。
いつもと変わらない姿に怒りを覚える。