キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ


「俺たちの姫を取り戻す。

ここから反撃開始だ――」


すると怜が扉を開ける直前、珍しく笑った。


「俺は別行動させてもらうけど、怒らないでよ?」

「いいよ、仲間だからな」

「ふ、生意気」


パタン


さっそく一人いなくなった事に落胆したのか、雷斗がため息をつく。


「な~んだ、結局いつもと同じじゃん~。せっかく一致団結出来ると思ったのにぃ」

「怜には怜なりのやり方があるんでしょう。少なくとも、いつもよりは多く喋ってましたよ」

「……」

「なんですか?」


雷斗のニヤニヤした笑みを、梗一は顔を歪めて一瞥する。


「〝怜〟って、さっそく名前で呼んでる梗一クン、かわいい〜っ」

「夏屋だけはそのままの呼び方でいきましょうか」

「うわ~ん、うそうそ!」


泣く雷斗はおいといて、梗一が「さて」と俺に向き直る。
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