キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ
act8······▸ 奪還
お兄さまと顔を合わせた後、お屋敷に入った。
使用人さんは私のことを「おかえりなさい」とは言うけれど、内心はどう思っているか分からない。
問題を起こす火種が帰って来たと思ってるかもしれないし、一切歓迎されていないかもしれない。
……でも、いいんだ。
だって私は、もう逃げないって決めたから。
「……すぅ、はぁ」
私は今、お父さまの書斎部屋の前にいる。
先ほどお兄さまに「お父様とお母様にきちんと挨拶するように」と言われたから挨拶を……と思ったけど。
どうやらお母さまはお出かけらしく、たまたま家にいたお父さまにご挨拶しにきている。
コンコン
「み、未夢です」
「入れ」
「失礼します」
ガチャ、と扉を開けると、いつもと変わらないお父さまの姿。
どこかきつく見えるメガネ姿に、オールバックの髪。
更には、スーツの柄もどこか派手で……〝お父さん〟というには近寄りがたいオーラだ。