キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ
「俺がナイフくらいで倒れるか」


静かに笑ったお兄さまは、まるでメラメラ燃えるように瞳がギラついていた。

その様子を見た怜くんが「冗談じゃなさそうだね」と。

ナイフを仕舞い、代わりに私の手を握る。


「行くよ」

「でも、お兄さまが!」


私の手を強く引っ張る怜くん。

「覇鐘が警察を呼んだっていうし大丈夫」と言うけど……。


「お兄さま……」

「早く行け――未夢」

「!」


久しぶりに名前を呼んでくれたお兄さまが、すごく柔らかい笑みを浮かべる。

それだけで……分かってしまった。


「お兄さま、警察を呼んだというのは嘘ですね……?」

「……本当だ」

「とぼけないでください!」


さっき、お兄さまの性格を理解した。

口ではキツイ事を言っていても、見えない所では優しいんだって。

それは言い換えると、お兄さまが話すことは「嘘が多い」ってことだ。
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