キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ
「警察を呼ばずに私を逃がして……。もしかしてお兄さまはここで、」
「……本当に足りない頭だな」
キンッと、向かって来た相手を転がっていた鉄パイプで弾くお兄さま。
その瞳はいつものように冷たい。
だけど――
「どんな状況でも妹を守るのが兄ってものだろう。そんなことも分からないのか、ばか妹が」
「!」
冷たくて、だけど熱くて。
お兄さまの瞳に込められた感情が、空気を伝って私に送り込まれる。
妹だと思ってくれた事が嬉しくて、だけどお兄さまが危険な目にあうかもしれないと思ったら悲しくて。
ぐちゃぐちゃな感情のまま立ちつくしていると、怜くんが「ほら」と私を引っ張る。
「またな、未夢」
「~っ」
その「また」は、本気で言ってるの?
もしかして「もう次はない」って覚悟して言ってる?
「怜くん、私やっぱり行きませんっ」
「それは無理。俺が覇鐘に怒られる」