キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ

「な、ないですっ。でもお兄さまが危なくて、」

「凌生が隣にいるなら心配ないでしょう。やられることはありませんよ」

「そうなんですか……?」


凌生くんってそんなに強いんだ。

確かに、さっきナイフの軌道を防いだのもすごかった。


……ん?


梗一くん、さっき「春宮」じゃなくて「凌生」って呼んだ?

え、あの梗一くんが?

名前で呼んだ!?


「え、えぇっ?」


訳が分からなくてワタワタしていると、私を掴まえている怜くんが「はぁ」とため息をつく。

そして、さっきまでの力強さがウソのように……私の手をパッと離した。


「作戦変更。あんたをココから逃がすより、ウラ(裏社会の人)を始末した方が手っ取り早い。梗一、どうせ連れてきてるんでしょ?」

「ふふ、もちろん」


すると、男を囲むようにグルリと集まった集団。

その姿を見て驚いた私とお兄さまに、凌生くんが笑った。
< 275 / 337 >

この作品をシェア

pagetop