キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ
「な、ないですっ。でもお兄さまが危なくて、」
「凌生が隣にいるなら心配ないでしょう。やられることはありませんよ」
「そうなんですか……?」
凌生くんってそんなに強いんだ。
確かに、さっきナイフの軌道を防いだのもすごかった。
……ん?
梗一くん、さっき「春宮」じゃなくて「凌生」って呼んだ?
え、あの梗一くんが?
名前で呼んだ!?
「え、えぇっ?」
訳が分からなくてワタワタしていると、私を掴まえている怜くんが「はぁ」とため息をつく。
そして、さっきまでの力強さがウソのように……私の手をパッと離した。
「作戦変更。あんたをココから逃がすより、ウラ(裏社会の人)を始末した方が手っ取り早い。梗一、どうせ連れてきてるんでしょ?」
「ふふ、もちろん」
すると、男を囲むようにグルリと集まった集団。
その姿を見て驚いた私とお兄さまに、凌生くんが笑った。