キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ

「まだお披露目してなかったよな――フロンティア。俺〝たち〟の暴走族だ」

「暴走族……ふっ」


お兄さまは一瞬だけきょとんとしたけど、すぐに笑った。

なにか含みのある笑みで。


「父が買った暴走族とは少し……いや、かなり違うようだ」

「イレイズの事か?」

「そうだ。所詮は金で雇われた集団。寝返るなんて、息をするより簡単だろう」


お兄さまが言うと、フロンティアとは別の集団がナイフや鉄パイプを持って入ってきた。

すると「不本意だが俺の暴走族だ」と、お兄さま。

ってことは――この人たちがイレイズ。


「総季に恨みを持っている暴走族がいると聞いた父は、多額の金で族を買った。そしてB地区を潰せと命令した。

だが飽きてすぐに手綱を離した父に代わり、俺が族をまとめるようになった。いわゆる〝総長〟というやつだ」
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