キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ

「……未夢?」

「私、何も知らなくて……。

こんなに色んな人に守ってもらっていたのに、自分は不幸だって思ってて……。

皆はもっと辛い事や悲しい事があったのに……どうして私、気づけなかったんでしょう」

「……ばかだなぁ」


ポロポロと泣く私を、凌生くんは抱きしめた。

温かな体温に安心して、どんどん涙が溢れてくる。


「ずっと未夢が頑張ってくれたから、俺たちは再会できたし兄貴とも和解できたんだ。

俺は、いつか未夢を迎えに行こうと思っていた。でも未夢が機会をくれたんだ。

あの日、雨の中で未夢を見つけた時……俺がどれだけ嬉しかったか分かるか?」

「嬉しかった……?」

「当たり前だろ。箱庭の中に閉じ込められてる好きな人が、いきなり手の触れる距離に現れたんだぞ。

もう絶対に離すもんかって、あの日誓ったんだ」

「……っ」


ポロポロ泣く私を見て、凌生くんは笑った。

「未夢はいつも泣いてるな」って。
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