キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ

「あ、あのね麻琴ちゃん。私、いまB地区に住んでるの」

「へぇ~あのB地区……えぇ!? B地区ぅ!?」


案の定、めちゃくちゃ驚いた麻琴ちゃん。

そりゃそうか。

麻琴ちゃんはB地区にロマンを感じていたもんね。


「許可を取り次第にはなるんだけど……また遊びに来てくれる?」

「うん、もちろんだよ、うん‼」

「ははっ、顔すごい真っ赤だよ。麻琴ちゃん」

「ごめん興奮しすぎちゃって……!」


言いながら顔をパタパタあおぐ麻琴ちゃんが「あ」と何かを見つける。

それは、下駄箱にある私の名前。


「ここ、まだ〝総季〟になってるね」

「本当だ……」


総季の名前のせいで、私もお兄さまも普通の生活が送れないほど責められる毎日。

それはもう散々な日々だった。


名前が「総季」というだけでも日常が送れない惨状だったから、お兄さまの提案により苗字を変更することにした。

色々な手続きが必要だったけど、背景にある事情が止むを得ないと判断され、私たちは無事に改名できた。
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