キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ

「未夢、直しといたからね」

「わ、ありがとう。麻琴ちゃん」


総季の文字が消され、新たに書かれたのは「小玉(こだま)」。

そう新しい苗字は、小玉。


新しい名前は何がいいか、お兄さまと考えていた時。

お兄さまが何気なく呟いたのがきっかけ。



『総季は大きくなりすぎて弾けてしまった。いえば俺たちは今、小さな結晶だ。

だけどいくら小さな結晶だって、集めて丸めればどんどん大きくなる。

俺たちの小さな玉、それぞれの手でゆっくり大きくしていこう』

『そうしたら私とお兄さまの玉を合わせて、一つの大きな雪だるまができますね』

『……』

『あ、結晶って、雪の結晶じゃなかったですか……?』

『……ふっ、その解釈もいいな』



私の言葉が予想外だったのか、しばらく笑っていたお兄さま。

だけどこの会話を経て、新しい苗字は「小玉」に決まった。
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