キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ

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未夢へ


元気にしているか? 春宮に虐められてないか?

俺は一度はアパート生活だったが、今は春宮の家で世話になっている。実は――バイトと言うのは「春宮の家で働くこと」だったんだ。ちょうど秘書が辞めたかなんだかでな。


今まで総季家で必死に勉強したのもあって、俺の長年の努力はここで活かされている。重宝されている……が、必要とされるのは慣れなくて落ち着かない。

だけど、俺も元・名家の端くれだ。いくら落ちぶれたとは言え、頭の中にある知識をタダで情報提供する訳には行かないと思い〝ある取引〟をした。


総季家の全てをさらけ出す代わりに、未夢を凌生と結婚させてほしい――と。


初めこそ渋った春宮の父親も、長い目で見ると総季家の全てを知ることの方が利があると思ったんだろう。父の代になるまでは街を掌握するほどの権力を持っていたんだ。そのノウハウは喉から手が出るほど欲しいはずだからな。
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