キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ
「とにかく。こんな状態の未夢ちゃんを連れていく訳には行かないから、可哀想だけど起こすからね」
「は? なんで」
「お客さんなんだよ、未夢ちゃんにね」
パチンとウィンクをした雷斗くんに、凌生くんはそこはかとなく嫌な予感がする。
だけど、そう言う時の予感こそ的中するもので……。
「未夢はいるか?」
「やっぱアンタか、覇鐘……」
ついさっき、あんたの手紙を未夢に渡したばかりだけど?――と。
眉間にシワを寄せる凌生くんに、お兄さまは「ふん」と鼻で一蹴した。
「これからスマホを買いに行こうと思ってな」
「は? これから? もう夕方だけど?」
「構わないだろう」
「いや、これから暗くなるのに二人きりとかないだろ。大体、未夢はさっきまで俺と、」
イラッとして凌生くんが僅かに滑らした言葉。
お兄さまは仏頂面のまま「ほぅ」と片方の眉毛を上げた。
「実に興味深い。未夢と何をしたって?」