キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ
「いや、それは、」

「お前たちはまだ婚約も結婚もしてないんだからな。その辺のことは分かってるはずだろう?」

「だから分かってるっての!」


凌生くんが声を粗げているところに、ちょうど怜くんと梗一くんがやって来る。


「珍しいですねぇ、凌生が大声を出すなんて」

「これを機に梗一も叫んでみたら?」

「ふふ、お断りします」


ニッコリ笑顔なものの冷気を漂わせている梗一くんに、お兄さまは「相変わらずだな」と笑った。


「聞いたぞ。このB地区を、四つの名家で管理していくらしいな」

「貴方が土地の権利を持っていてくれたおかげで、話がスムーズに進みましたよ。ずっと守ってくれていたんでしょう?この地が更地にならないように」


笑って頷いたお兄さまを見て「よく奪われなかったよね、無謀」と、呆れ顔の怜くん。


「でも、おかげで児童養護施設に生まれ変わったよ。〝B地区〟って名前も新しくなった」


お兄さまが「そうだったのか」と驚く。
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