キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ
「そう言えばココに入る前に看板が、」
――「さぁ未夢ちゃん、服を選んで〜」
――「わわ、どうしましょう。決められません、雷斗くんっ」
私が身なりを整えている声が、建物の奥から聞こえていたらしい。
凌生くん、お兄さま、その他みんなが同じ方向を見た。
「……未夢さんみたいな子達に衣食住を与えてあげられる施設にしようと凌生が言い出した時は驚きましたが。親も納得してくれたので良かったです」
「イレイズも変わらずここで働くことが出来る。まぁ、もう〝イレイズ〟なんて名前じゃなくて、立派な〝社員〟だけどな」
「合同経営は難しいぞ。小競り合いをする事がないよう気をつけることだな」
意地悪いことを言うお兄さまに、凌生くん、梗一くん、怜くんが互いに目配せをする。
だけどピリッとした空気はなくて、昔みたいに和やかな空気がこの場を包んだ。
「安心しなよ。あの子がいる限りは大丈夫そうだし」
「なんたって〝姫〟ですからねぇ」