キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ
「……え?」


凌生くんはスッと立ちあがり、私から距離をとる。

そして「兄貴からの、まだ続いてたなんてな」と。

なぜか悔しそうな顔をした。


「あの、凌生くん……?」


どうしたの? と聞こうとした瞬間。

凌生くんは笑った。


だけど昔のような笑顔ではなくて……。

その笑みは暗く妖しく、そして――


「でもな、未夢。

お前がまだいじめられていたとしても、もう助けてやれねーよ」

「どういう……?」

「だって俺は、お前の兄貴の――」


ガシャンッ


凌生くんの声を遮ったのは、遠くで聞こえた大きな音。

まるでガラスが割れるような音に続いたのは、なんと女性の叫び声。

続いて「イレイズが来たー!」と悲鳴が聞こえる。


え、イレイズ?

イレイズってなに?

それに女の人を助けないと!


「……一応聞くけど、それって立とうとしてんの?」
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