キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ
「そ、そうです……!」


頷く私を、凌生くんは呆れた顔で見た。


「全身震えすぎ。どう見ても生まれたての小鹿だろ。お前なんか出て行っても足手まといになるだけだからやめとけ」

「で、でも、」


助けてって言ってる人がいる。

その悲鳴が誰にも届かなかった時の悲しさは、私が一番知ってると思うから。


「困っている人を放っておけません……っ」

「お前だって困ってる最中だろうが。自分が人質になってること忘れんなよ?」

「う……っ」


そう言われると、その通りだ。

ついさっき「人質で道具」と言われたばかり。

でも、それはそれ。これはこれだよ。


「それでも私は……っ」

「……」


震える足でやっと立ち上がると、凌生くんは笑っていた。

次に、大きな手で私の頭をポンポンなでる。


「こういうのは専門に任せろ」

「専門?」

「暴走族はケンカが専売特許だからな。俺が何とかするって言ってんの」
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