キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ
――おいで。僕が未夢を助けてあげる
――まだ兄貴から虐められてんの?もう助けてやれねーよ
好きな人から、正反対の言葉を言われた。
それは、天国と地獄のように相反する内容。
「そっか、私……好きな人からも見放されたんだ」
お兄さまからも家族からも、使用人からも街からも。
そして初恋で片思いの人からも、必要とされない私。
改めて実感すると……どうしようもなく胸が締め付けられる。
「っ、……あれ?」
突然ふわっと漂う良いかおり。
それは置かれた食事からだった。
ご飯の湯気が、この現実を煙でまくように――私の前で儚くユラユラ揺れている。
「お屋敷でのこともココでのことも……もう全部ぜんぶ夢だったらいいのに」
悲しみで何も喉を通りそうにない。
体がどんどん冷えていく。
もう、何も考えたくない――
虚しさから目をそらすよう、震える瞳を静かに閉じた。
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