キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ
「す、すみません――お兄さま」


電話越しだというのに。
声だけだというのに。

それだけで恐怖に怯え、委縮しちゃう私。

震える手から、スマホが落ちませんように……。


『帰ったら話があるから部屋に来るように』

「え、」

『必ずだ』


ブチッ


ツーツー音を聞きながら、切れてしまったスマホ越しに「待って」と、今更ながら呟く。

だけど……例え電話が繋がっていたとしても。

私の話をお兄さまは聞いてくれない。昔からそう。


「はぁ……。行きたくないなぁ……」


総季(そうき)覇鐘(はがね)。
四つ上の、大学一年生。

金髪に近い茶色の猫毛。
手足が長く、スラリと背が高い。

お兄さま、と呼んでいるけど実は――

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