キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ
「はぁ」とため息をついて、ベッドから降りる。
少しだけしか食べられなかった食事は、いつの間にか姿を消していた。
誰かが持って行ってくれたのかな。全然気づかなかった。
「食べられなくてごめんなさいって、言いたかったんだけどな……」
次こそは、きちんと食べよう。
クヨクヨしてばかりじゃダメだもん――
「……あ。
この部屋から出たら怒られるかな。怒られるよね……」
分かってはいるんだけど、そろそろお手洗いをお借りしたくて……。
よし、ちょっとだけ覗いてみよう。
声を出せば、誰かいるかもしれないし。
そろりとベッドを降り、ドアノブを下げ扉を押す。
その時だった。
ガチャ、チャキ
「――どちらへ」
「⁉」
一瞬のことだった。
部屋の扉を少し開けただけ。それだけなのに。
その隙間を感知した「誰か」が扉の外から勢いよくドアを開け、私の喉元へ冷たいナイフを突きつけた。