キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ

「あ、あの……っ」

「叫ぶなら口を塞ぎます。逃げようと考えてるなら監禁します。次に衣服をはがし両手を縛ります」

「……っ」


ドッドッド――

こんな騒がしい心臓の音は初めてだった。

この音は目の前の人物を認知しても止むことはなく、むしろ速度を上げ続ける。


「に、逃げません。なので離してください。

梗一くん」


すると、私に名前を呼ばれた秋國梗一くんは、ニヤリと笑った。

紺色の髪が、窓の外を写す闇と同化してる。

それを見ると、梗一くんは闇そのものな気がして……どこか危険を感じる。


「さ、さきほど〝これからお仕事〟と……そう言われてませんでしたか?」


上がる息をなんとか抑えながら尋ねると、梗一くんは「えぇ」と薄い笑みを浮かべた。
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