キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ
「こら、擦らない。顔が腫れた人質なんて見れたものじゃないですから」
「も、もうしません……」
両手をあげて降参のポーズを取ると、梗一くんは「よろしい」と今度こそナイフを和服の中にしまった。
「で、外に何の用ですか?」
「あ、お手洗いにいきたくて……」
最期の方は声が尻つぼみになったけど、梗一くんには届いたらしい。
「仕方ないですね」と浅く息を吐く。
「では私がご一緒します。あいにく、今は私しかいないもので」
「え」
梗一くんと一緒にトイレ……?
嫌です恥ずかしいです、と言いたいけど、ここで反抗するとナイフを出されかねない。
仕方なく「お願いします」と頭を下げた。