キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ

走って帰る最中。

買い物帰りの主婦たちが、道の端で井戸端会議をしている。よくある光景に、思わず頬が緩んだ。

……会議の内容を、聞くまでは。


「良かったのは先代まで。最近の総季家にはガッカリだよ」

「しッ、声が大きいよ。もしも総季家の人に聞かれたら……」

「なーに心配してるのさ、大丈夫だって。総季家ともあろう人が、街中を車を使わず歩いてるわけ……」


と、ここまで話した所で、主婦たちの目が私を捉える。


「え!?」
「あなたは、確か……」


石のように固まってた主婦たちに、苦笑を返した。


「あ、あはは……。こんにちは」


ペコリと挨拶すると「ギャー!」という叫び声と共に逃げられた。

続いて「すみませんでしたー!」と断末魔に似た声も、街中に響き渡る。


「ちょ、待っ……! 行っちゃった。
本当に気にしてないんだけどな……」
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