キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ
「あんな事って?」

「春宮が未夢さんを好きなはずないっていう、アレですよ」


すると雷斗くんは天を仰ぎながら「あれね」と、面倒くさそうに答えた。


「逆にさ、なんで言っちゃダメなの?」

「春宮がどんな気持ちでいるかなんて、今の私たちには分からないでしょう。春宮の気持ちを、さも代弁するかのような言いぐさはどうかと思いますよ」

「俺は春宮の気持ちを予想しただけだよ? 信じるか信じないかは未夢ちゃん次第って事で」

「また勝手なことを」


面白がる素振りはあっても、まったく反省の色がない雷斗くん。

そんな彼を見て、梗一くんは深いため息をついた。

その時だった。


「イレイズ来た?」

「っ」
「――⁉」


ぬっとあらわれたのは、冬城怜くん。

予期しない登場に、二人はビクリと肩を震わせる。


「なぁ冬城、もっと派手に登場してくれない? ビックリしすぎて声も出ないって」


はぁ~と深呼吸する雷斗くんに、無言のままの怜くん。

「だんまりかよ」と先に歩き始めた雷斗くんとは違い、梗一くんは自身の袖に手を差し込みながら質問した。
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